みんなで開発!ブルーカーボン可視化AI
株式会社シンク・ネイチャー(代表取締役:久保田康裕、以下「シンク・ネイチャー 」)は、Ocean180プロジェクト、人工知能学会、千葉工業大学 人工知能・ソフトウェア技術研究センターと連携して、科学的に実効性のある脱炭素対策への貢献を目指し、ブルーカーボンクレジット事業の基盤となる、ブルーカーボン可視化A I開発のコンペを開催します。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000100724.html
背景
気候変動問題の解決策の一つとして、沿岸域の海草藻場を再生して炭素を貯留するブルーカーボンが注目されています。海草や藻類が光合成をして成長する過程で、海中に炭素が固定されるので、海草藻場再生が温暖化対策に貢献するという考え方です。ビジネスの世界では、企業が排出した炭素をオフセットする目的で、ブルーカーボンによる炭素取引が流行り始めています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220825/k10013786921000.html
しかし、海草藻場を人工的に再生するのは技術的に困難である上に、実際の再生事業は自然のメカニズムを十分に考慮していないことが指摘されています(向井宏 2011. 干潟・藻場の再生事業:その問題点. 地球環境 16: 53-60)。さらに、海草藻場における炭素の長期貯蔵の効果も必ずしも担保されている訳ではありません。例えば、Williamson and Gattuso (2022)は、沿岸域のマングローブ、海草藻場、干潟湿地などのブルーカーボンを利用した炭素隔離・貯留は不確実で信頼性が低く、気候変動に対する費用対効果に疑問符がつき、過剰なクレジットをもたらす可能性があると指摘しています。
https://hal.inria.fr/hal-03795832/
特に日本の場合、台風や河川からの土砂の流入などで、大規模な撹乱が起こりやすく、沿岸域の海草藻場、特に内湾の堆積環境に成立するアマモ場は、時間的・空間的な変動性がとても大きいのです。ブルーカーボン事業は、自然の海草藻場が分布しない場所で、人工的に海草藻場を再生して炭素貯留するのが一般的です。しかし、そもそも自然の状態で海草藻場が分布しない場所は、海草藻場の成立適地でない可能性もあります。生態学的に不適切な場所で自然再生事業を行っても、人工的な海草藻場は、頻繁な自然攪乱で消失することもありえます。つまり、ブルーカーボンによる炭素隔離は不確実で信頼性が低く、その実効性は十分に検証されていないのです。
コンペの内容
自然のメカニズムを無視した海草藻場の再生では、ブルーカーボン事業を継続することはできません。このような背景とモチベーションから、私たちは、ブルーカーボンのダイナミクスを可視化するAIを開発するコンペを通して、科学的に実効性のある脱炭素対策に貢献します。
このコンペでは、沖縄県の沿岸海域をモデルにして、海草藻場の様々な場所、年代時期に調査された、15,000点ほどの海草藻場の被度データ(一定面積の地表面や海底面を覆う割合)と、様々な環境変数や衛星画像を用いて、2019年夏季時点の海草藻場の被度を推定していただきます。入賞者(1位から3位まで)には賞金が授与され、2023年6月に熊本城ホールで行われる人工知能学会で授賞式を兼ねて、開発したAIを発表していただきます(チームの場合は1名のみですが、交通費は別途支給いたします )。
コンペの詳細は、以下をご覧いただき、奮ってご参加ください!
https://stair.connpass.com/event/269118/
コンペ成果を元にした展望
今回のコンペを元に、以下のような展開を想定しています。
1)日本・世界の海草藻場の分布適地と被度分布を明らかにします。そして、2)日本・世界の海草藻場の分布適地と被度の時間変動(場所依存の不確実性)を明らかにします。最終的に。3)場所依存の不確実性を基に、海草藻場の再生失敗リスクと炭素固定貯留が機能する時間を可視化します。これにより、ブルーカーボン適地マップ、日本・世界スケールの海草藻場の炭素固定貯留効果の実効性を評価します。
https://note.com/thinknature/n/n701f88e6b723