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海洋空間計画:保全と利用の調和
海の豊かさを守るためには、海の保全と適切な利用のバランスを図る海洋空間計画(MSP: marine spatial planning)が重要です。
海洋保護区の保全効果(実効性)を強化する場合でも、漁業、再生エネルギー(洋上風力発電)開発、ブルーカーボンに関する藻場の利用など、 各地の海に関わる様々なステークホルダーのニーズを調和して、全体利益を最大化する工夫が求められます。
私たちは、海洋生態系データの空間解像度が、海洋空間計画を実装する鍵であり、データの分解能に応じて、海の保全と利用を精緻化できると考えています。
このような観点から、Ocean180プロジェクトでは、海の保全と利用に関係する社会経済情報(沿岸漁業・養殖の状況など)も見える化しています。現状の海洋保護区の分布を地図化し、それらの実効性を評価したり、漁業統計から漁獲収益を地図化する作業などをスタートさせています。
例えば、漁業収益と海洋保護区の保全効果は、密接に関係しており、漁業と保護区は、必ずしもトレードオフではないかもしれません。
温暖化や乱獲によって漁業資源が移動したり枯渇することに対応して、漁業者が漁獲競争を加熱させると、漁業資源はさらに劣化するでしょう。
しかし、漁場の一部を保護区にして、局地的な漁業利用に空間的な制限をかけるとどうなるでしょうか。海洋保護区による漁獲競争の緩和は、どのような帰結をもたらすでしょうか。現在、このような分析も開始しています。
「漁業を取るか?海洋保護区を取るか?あるいは洋上風力発電施設を優先すべきか?」といった単純な議論に陥ることなく、高解像度データの分析を基にした予測結果によって、海の保全と利用の両立を図ることを目指します。